春分の日も過ぎて、ようやく暖かくなってきましたね。
コロナ禍に加えて、世界情勢も緊迫の度合いを強めており、慌ただしく不安な日々が続きますが、気持ちが負けるといいことはありません。日光浴をして、一息ついて、心機一転がんばってまいりましょう。
3月は日本では年度替わり。入学卒業、就職異動退職など、人が大きく動く時期です。弊社も贈り物のご用命や、新年度への準備として、新しいバッグやお財布のご用命をいただくことも多くございます。今回の作例紹介も、そんなおひとりです。
今回のお客様は…
今回のお客様は、雑誌や書籍のデザイン、ウェブのUI/UXデザインをご専門にされているデザイナーのMF様です。ちょうど十年前に長財布をお求めいただいて以来、長くお付き合いをさせていただいているお客様です。
【P555NCの写真をもらえれば】
コメント「P555NC。現行品のP888WWの素材違いの旧バージョンです」
今回のご注文は、こちらの記事をご覧になってのことでした。
「コロナ禍や出版不況で、ウェブのデザインの仕事の比重が高くはなってるんだけど、やっぱり紙は持ち歩かなくちゃいけないから。ポートフォリオ(作例集)は、やはり紙の方が見易くて内容が詰め込めるし、色校(正しい色で印刷できてるかの見本)などで、荷物は常に重いんだ。iPad Proだけで動く日もあれば、MacBookと両方持っていく日もあるし」
更にお話を伺うと、近年は美大で専門学校で、実務家講師として教鞭を執られることも多く、学生さんのレポートや、担当講義の資料、学内の書類などを持ち歩くことも多くなったとか。
「ほんとに荷物が重くなったから、大きめのナイロンのリュックで評判の良いのを探して使ってるんだけどね、いかんせん重いものは重いんですよ。仕方ないかと思ってたんだけど、ブログで紹介されてるのを見て、そんなに軽く背負えるなら欲しいなと思って」
そういったことで、ご用命をいただきました。
ネイビーをベースに、アクセントにキャメル
素材はシュランケンカーフのネイビー。引手や丸タックだけキャメルにしたコンビネーションカラーになっています。
シュランケンカーフのキャメルは、わりと明るめなので、遠目にはオレンジにも似て見えるかもしれません。色相環でいうネイビーの補色はオレンジなので、オレンジでも相性のいい組み合わせです。
ただ、シュランケンカーフのオレンジはかなり強めのオレンジなので、ちょうど真反対の色で組みあわせると、目立ちすぎていたかもしれません。すこしだけトーンを落としたキャメルを挿し色にしたことで、アクセントが効きつつも落ち着きのある上品な色使いになっています
今回はこの組み合わせで、一枚の革から、3点のアイテムをあつらえさせていただきました。
淡いベージュの縁取りがかわいいリュック
糸とファスナーは、すこし黄みがかった淡いベージュ。お打ち合わせの際にご指定いただいたものです。どちらもpiccinoでは普段は使っていない色調のものだったので、特注で取り寄せています。
シュランケンカーフのネイビーは、遠目には黒にも見間違えるほど濃い紺なので、男性向けのビジネス、準フォーマルの用途で、黒一色では堅すぎるという方が、遊び心で選ばれることが多いお色です。そのため、ファスナーテープは同色。ステッチも同色か、すこしだけ明るめのブルーネイビーを標準色としています。
黄みがかった淡いベージュで縁取るというのは、過去に憶えがない配色でしたが、やはりそこはデザイナーさんのご注文です。冴えた色使いで、黒に近いネイビーが、とてもかわいい印象のバッグに仕上がりました。
もちろん、かわいくても容量と機能性は抜群。マチの広い307型なので、ポートフォリオ(作例集)でよく使われる100ポケットのクリアファイルブック(会社のキャビネットに並んでいるようなもの)まで、楽々収納できました。
角2の封筒が入るのが◎、ドキュメントケース
革封筒型のドキュメントケース。A4サイズの印刷物を入れた角2の封筒を、角を折らずにそのまま収納できるサイズなので、原稿や出力見本を持ち運ぶのに重宝するとのことです。
単体でクラッチバッグとしてお持ちいただく他、リュックの中にそのまま入るので、整理用のインバッグとしてもお使いいただけます。
ポーチにショルダーベルトを着けて、使い出がアップ!
このリュックは底が深いので、細々としたものを整理しておくためのインバッグとして、ポーチを一緒にお薦めしています。例えば、お財布とスマートフォン、パスケースなど、お金にまつわるものをこれにひとまとめにしておくと、このポーチだけを取り出してそのまま持っていけばいいからです。
さらに最近では、それにナイロンのベルトを付けて、ポシェット(コンパクトなショルダーバッグ)にも出来る拵えが人気です。
リュックは便利ですが、やはり背中に手を回して手探りというのは限界があるので、一度、肩から下ろして中身を取り出すということになります。これが意外と面倒ですし、身体をよじって戻してと、肩や腰への負担も少なくありません。その為、リュックと併用してポシェットも、という使い方をされておられる方も多くいらっしゃいます。
ただ、ポシェットバッグもそれ単体では、大きさの割に多くのポケットが付いていたりして、嵩張るデザインであったりします。結局、両手をフリーに出来るというリュックのメリットを打ち消してしまう組み合わせになってしまうこともあります。
リュックとの併用が前提のポシェット。メインのリュックに対して、脇に控えてくれるさりげないもの。そういった意味で、このポシェットは重宝します。
インバッグとしてお使いになれるポーチなので、邪魔になったらリュックの中に放り込めます。ショルダーベルトがナイロンテープなので、必要の無いときには畳んでしまっておけば、バッグの中で引っ掛かることもありません。そしてなにより、同じ素材で同じつくりであつらえたものなので、ファッションとしてのコーディネートにも違和感がありません。
同様のコンセプトで、ナイロンのリュックにナイロンのポーチなどがおまけに付いている製品も市場にはありますが、やはりおまけはおまけ。単体でバッグとして持ち歩けるほどしっかりした作りではありません。「便利だし必要だけれども、ちゃちな作りだから、そのうち壊れそう」というお声も耳にします。
piccinoでは、これもひとつの製品として作り込んでいます。おまけや付属品としてお付けするのではなく、単品でも販売しておるものを、併せてお持ちいただくことをご提案しています。(あるいは今回のように、お仕立ての場合は、はじめからセットで作ってしまうと、統一感が出て、とてもいい仕上がりになります)整理用のインバッグとして、ポシェットとして、利便性が高く、満足いただける組み合わせになること間違いありません。
今回のお客様にも
「このリュックとポーチのまま、旅行にも行けそう。衣類はいつも送っちゃうことにしてるから、それ以外の旅グッズも全部入ってコンパクトにまとまりそう」と、とても喜んでいただけました。
カジュアルなパンツルックにも似合う
このリュックの他の作例では、「パンツスーツに合うだけでなくスカートにも合う」というご意見が印象的でしたが、カジュアルなパンツルックでも違和感なく持ちこなしていただけました。
背負っていただいた印象は、やはりまず「軽い」と。
「革のリュックってもっと重いんだろうと思っていたんだけど、思いのほか軽くてびっくりした。今日背負ってきたナイロン製のものも重量はそんなでもないけど、背中が汗ばむと蒸れて吸い付いたりという感じがあったんだけど、そういうのがなくて軽快に持てそう」
と、そのまま背負ってお帰りになりました。また後日、
「そのまま背負って帰らせてもらったけど、あの後に打ち合わせとかで一日動いてみて、めちゃくちゃ使いやすくて衝撃を覚えています。とてもフィットして動きやすい」というお言葉を頂戴いたしました。
ショルダーベルトのフィッティングをきちんとして、お客様ひとりひとりの体格に合わせてお仕立てした真骨頂でございます。
デザイナーさんならではの趣向
これらのお品にはもうひとつ、オリジナルの要素が入っております。それがこちら。
MF様の屋号のロゴを入れたタグをお作りして、リュック、クラッチバッグ、ポーチのすべてに縫い付けました。昨年、落語家さんのノベルティグッズとして、お名前を刻印したタグを縫い付けたことはございましたが、個人の方の持ち物でこちらの細工を行ったのは、初めてのケースです。
今回の場合は、ノベルティではなく、「蔵書印」のようなイメージです。
「ご自身でロゴデザインをされているお仕事ですし、せっかくのお仕立てものなので、ご自分のお持ちのものに印を付けるという意味合いで、刻印のタグを入れてお作りすることもできます」とご提案したところ、ご快諾いただき、ロゴの図案をお預かりして判子からお作りし、タグを作らせていただきました。
とても格好良く出来ましたが、しっくりきすぎて、まるで「MF様という“服飾”デザイナーの方のブランドのバッグ」のように見えてしまったのが玉に瑕です。(笑´∀`)
※もちろん「piccino」のネームも傍に入れてあります
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ちょうど十年のお付き合いになるお客様との、とても面白いご注文の作例となりました。
ありがとうございました。
(30代女性・デザイナー)