秋口にお納めしたバッグを携えて、お客様が遊びにいらしてくださいました。
8月にご注文にいらして、9月に生まれたワープロラックスカーフのセミショルダーバッグ。
ご注文いただいてすぐ、お客様が長い海外出張に出かけられてしまい、ご配送にて納品させていただきましたので、実際に肩に掛けていただいたところを拝見するのは初めてでした。
爽やかで品のあるアクアブルーが、ネイビーのスーツにとても良く映えています。
小柄なお客様にバランスの良い小振りなバッグですが、A4超サイズのファイルもらくらく入ります。また、シャープな見た目よりも、マチが広く取ってあるので、小物類も思ったよりたくさん入るとのこと。
長財布だってらくらく。大きく開いて出し入れしやすいと、たいへん気に入っていただけました。
以前お買い上げいただいたペンケースと一緒に。
元々、スカイブルーやアクアブルーといった、ドイツのカーフレザーの水色がお好きで、欧州の有名メゾンのアイテムなどもお持ちでいらっしゃる方です。
弊社とご縁があって、シュランケンカーフのペンケース、もちろんスカイブルー、をお求めいただいたのがおつきあいのはじまりでした。たいそう気に入っていただき、出張中にお写真をいただいたこともございます。
このバッグも、お客様とともに、世界中を旅して、世界中の空の色と太陽の光をその身に受けることでしょう。革の生まれ故郷のドイツに行ったら、日本育ちだと珍しがられるかもしれませんね。
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お造りした際の写真がこちら。
原型となったデザインではイタリアンナッパラックスレザー製でした。それをお客様のご要望によって、ワープロラックスカーフで製作しました。
素材を載せ替えるにあたって、いくつか素材なりの変更を施しました。
最大の変更箇所はハンドルです。原型では、天頂部からの部分は帆布のテープ仕様で、カジュアルなイメージで仕上げてあったのですが、今回はビジネスでお使いになるということと、革自体の風格を大事にして、総革(ゾッキ)でまとめました。
ピンと屹立するハンドルが描くふっくらとしたラインと、玉入れによって強調された四角い本体のフォルムが融合し、バランス良く、端正なイメージを作り上げています。
帆布のテープは幅が一定で、幅広なほど握りつぶして持ちやすいという特性があります。ですが革製の場合、あまり幅広だとかえって持ちづらくなります。かといってカン留め部分と同じ細さで通しては、ビジネスバッグとしては華奢になりすぎてしまいます。
そのため、型紙を新たに起こしました。カン留めから金具を経て細身のハンドルが伸び、つなぎで膨らみを持たせ、天頂部は掛けやすいようにまた細くなるという、有機的な変化を持たせたデザインのハンドルができあがりました。
ファスナーの色はチョコレートカラー。ステッチは革の色に近い水色の糸です。
ファスナーテープの色は、革の色と同色でまとめるか、ベーシックなチョコレートカラーをお薦めしています。このような淡色系の色の場合、同色でまとめてもキレイなのですが、ちょっとおもちゃっぽくなってしまうというか、印象が軽くなってしまうのです。
今回はチョコレートカラーにすることによって、一本筋が入り、全体の印象を引き締め、高級感のある仕上がりになっています。
また、ステッチの場合は、これが逆になります。大きく分けてみっつの方向性があるのですが、ひとつは、革の色と同色でまとめる。ふたつは、同系統で一段濃い色、つまりディープブルーやネイビーでエッジを効かせる。みっつは、まったく違った色、たとえば赤など、でステッチを強調する。といった方向です。どれもそれぞれに良さがありますが、順にカジュアルになり、趣味の度合いが高くなっていきます。
今回は、お気に召していただいたアクアブルーの革の色気の良さと品格を崩すことのないよう、同色でまとめて、すっきりとした仕上がりにしました。
開口部はマチまで繋がって大きく開き、内側が見やすくなっています。
内袋のお色は、通常のベージュからオレンジに変更。外見がすっきりおとなしいつくりで、開いた時には華やか、という演出です。
ブルーとオレンジは、色相環において補色の関係にあるので、コントラストがより際立っています。
書類をたくさん入れてもいいように、底鋲も設けました。
水色というのは、ビジネスバッグとしては店頭では選ばれにくいお色です。しかし今回のように、お客様にしっかりとしたお好みがおありであれば、作り方によっては、このように端正に仕上げることができます。
(40代女性、会社経営)