バッグに里帰り休暇を!!
今年は早々に梅雨も明けて、線状降水帯が通り過ぎた後はずっとお日様が照っていて、暑いですね…。日本国内ももちろん、ロンドンでは40度、中国雲南省では44度を記録するほどだそうです…。熱中症にはくれぐれもお気をつけください。
そんなふうに、あまり外に出たくないこの時期、ご愛用のバッグにもすこし暇を出してはみませんか。
前回の記事で予告しましたが、piccinoでは、バッグの内袋のリフレッシュサービスを始めます。長年ご愛用いただいてきたバッグの内袋(裏地)を、新しいものにして据え付け直すという試みです。
ぜひご利用いただき、ご愛用のバッグを、末長く気持ちよくお使いいただけたら幸いです。
「革が元気なら」OKです!!
本サービスは、従前からの「お修理サービス」のヴァリエーションになります。なのでまず、お修理について、おさらいをさせてください。
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piccinoのバッグは、主に5つの素材で構成されています。
第一に革。メインの袋を作ります。
第二にキャンバス生地。内袋をつくります。
第三にファスナー。ニッケル鋼の務歯にナイロンテープで出来ています。
第四が糸。工業用ミシン糸は主にポリエステルで出来ています。
最後が金具。これもニッケル鋼です。
これらの部材のうち、一番長持ちするのは革です。表面加工がしっかりしている革であったり、素揚げのものでも油分の揮発を防ぐためのお手入れをしっかりされていれば、繊維が乾燥して脆くなったり、腐敗することを遠ざけられて、長く保たせることができます。
本体を構成している革素材の状態が良好なら、ハンドルなどの部分的に消耗が激しい部分や、他の四部材については、取り替えることも可能です。
piccinoでは修理のご依頼をいただく際、「革が元気なら、修理は可能だと思います」という言い回しをよくしますが、それは、縫い解きと再度の縫い直しに耐えるだけ、革の繊維の強度が残っていれば、他の部品や副材を造り直す、付け直すことができるからです。
※実際に修理が可能かどうか。お修理代(作業工数と工賃)がいくらになるかは、現物を確認しないとわかりません。
かたちあるものは消えゆくが世のさだめ。しかし、
他の部材では、多くの場合、最初に痛むのがファスナーです。ファスナーの開け閉めをするときに摩擦熱が生じたり、へんな方向で力が掛かると、そこから少しずつ脆くなって、角っこから破けたりします。また、務歯が布やビニールなどを噛んでしまって、無理に引き剥がそうとして、欠けたりすることもあります。
内袋のキャンパス生地もまた、長い時間のうちに摩擦や、荷物の重量によって引っ張る力がかかって、少しずつ脆くなって裂けていきます。それらを縫い合わせている糸も、長い年月の間に引っ張られ続けたり、お洋服と擦れ続けていくと、撚り合わさったものが次第に破れほどけて、糸が切れていきます。また金具は、素材の質や造りによってまちまちです。
長い年月のうちに、これらの部材が疲労したり破損したりしていくのは、やむを得ないことです。かたちあるものはすべて消えゆくが世のさだめです。しかし、日々のお手入れやお修理など、適切に手を加えていくことで、より長く寿命を保つことはできます。
piccinoでは、ご愛用いただいている製品を、可能な限り長く使っていただきたいので、お修理のご相談はいつでも承っております。
壊れてはいなくても汚れはします
辞書によれば「修理」とは「壊れたり傷んだりした部分に手を加えて、再び使用できるようにすること」だそうです。バッグの機能である「物を収納して運ぶ」ということが叶わなそうになって来たときに、悪いところを直せばまたお使いいただけるというものについては、従前より修理を承っております。
ただ、壊れたり痛んだりしていなくても、「汚れる」ということもあります。
ハンドル部分は、自分の手の埃や垢、油脂が溜まって黒ずんでいきますし、デニムなどの強い染料が影響して色移りしてしまったり、ボールペンのインクが付いてしまったり、長年の埃が表面に沈殿してうっすら黒ずんでしまったり。特に内袋の場合は、中に収納したものの染料が影響してしまうこともあります。
それらは、「壊れて」はいないし「使えな」くもありません。また「それも味」だと捉えることも出来ますが、あまり気持ちのいいものではないかもしれません。
修理の必要は無くても、お客様に気持ちよくお使い続けていただくために、手を加えることが、本サービスの趣旨です。
実例(H240,ネイビー,4年半使用)
それでは、実際にどのようにするのかを見ていきましょう。
今回は、スタッフTが実際に使用しているバッグの内袋交換をしてみました。
シュランケンカーフ製のビジネスバッグ。H240。2018年1月製作のもので、使用して4年半になります。しわの多い、正規の製品には使いづらい革の部分をあえて集めて造った、いわば賄い品のため、使って浮き出てきたしわも合わせて、まるで棚田のような面白い景色が浮かんでいます。
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続けて内部です。
口前のところが、長年の使用で黄ばんでいるのが見て取れます。
このデザインは、口元がマチまで大きく開くタイプです。しかし、ハンドルのみなので、出先で開けようとする時には、片腕に通して持ったままということになるのでしょう。それで開けようとした場合、あまり大きくは開けず、すこしだけファスナーを開けて、手を突っ込んで、ものを取り出すような使い方になります。その為、布地に手や荷物が擦れて、次第に色が付いていったのだと考えられます。
これが、このようになりました。
リフレッシュ!!ユースフル!!
なんということでしょう、元はこんな鮮やかな…なんてことはさすがにありません(^◇^;)
使用前使用後がわかりやすいように、お仕立てのご注文で選べるオレンジの生地で、新しい内袋を造ってもらいました。ネイビーの本体とは反対色になるので、コントラストがとてもきれいな仕上がりです。
実は今回、内袋を新しく造るにあたり、ポケットの構成を変更しています。
バッグを使っていくうちに、このポケットはもう少し深いといいとよかったとか、このポケットは使ってないからいらなかったとか、これが入るところを増やして欲しいとか、そういう気づきを覚えられることがあるかと思います。
それらを反映させた仕様書を書いて、新たに造ってもらったのです。
このように、実際にお使いいただいた後で、より良い使い勝手を目指せる、というのも、本サービスのポイントです。
また、こちらの仕様が自分にとってベスト、ということがわかれば、例えば、また次のバッグをお求めいただく際にも、こちらの仕様で、とご指示いただければ、お仕立てすることも可能です。
※既成品のお値段に加えて、別途、お仕立て代が発生します。
お仕立てのご注文をいくつもいただいたお客様曰く、
「バッグを替えても、基本的な使い方(決まった位置に決まった物を入れられるポケットが設けられていること)が同じにできるのはとても便利です。たまに、以前買った他社製のバッグを使おうとしても、これがうまく仕舞うところがないとか、あれってどこに入れたんだっけ、って戸惑うことが多くて。piccinoのに慣れてしまったら、他のものが持てなくなりました」
とのこと。現在、こちらのお客様には、TPO別にお使いいただけるよう3本のバッグをお納めし、どれも同じ仕様にしています。
底板アップグレード
今回は、せっかくなのでもうひとつの新オプションサービス、底板アップグレードも試みてみました。通常はオレンジの内袋(裏地)の場合、同じオレンジの生地で底板(ベルポーレン)を包んで縫うのですが、こちらは革で縫っています。
真新しい内袋のなかに、きれいな革張りの底板が入って、とても高級感と満足感のある仕上がりとなっています。
シュランケンカーフで底板をお作りする場合、全20色から選ぶことが出来ます。なんとなくセオリーとして、内袋と同じ色か、あるいは本体と同じ色にすることが多いですが、オレンジと相性の良い色として、裏面はライトグリーンにしてみました。こちらを上にしても、オレンジのなかにライトグリーンが効いて、とてもいい景色になります。
また、前回の記事でスタッフRがやったように、隠しポケットを付けてみました。
前回のようにタテ型ポケットではなく、ヨコ型ポケット仕様にすれば、薄い束入れなどもしっかり隠して収納することが出来ます。
詳しくはお問い合わせください。
内袋が新しくなって、使い勝手もよくなり、また色鮮やかになって、底板で色も遊べて、スタッフTは大喜びでした。
こちらの『内袋リフレッシュサービス』『底板アップグレードサービス』に、ご興味のおありの方は、お持ちのpiccinoのバッグの写真を添えて、メールにてお問い合わせ下さい。革の状態を判断して、可能かどうかの判断と、概算のお見積もりを出させていただきます。その上で、お預かりさせていただくことになります。
また、実際に製品をお預かりして、職人が状態を拝見した段階で、他に不具合が見つかることもございます。ファスナーテープの破れや、糸のほつれ、ハンドルの損耗の程度など。そちらの修理の必要が確認された場合、それも含めた上でのお見積もりも別途、出させていただきます。よりひどくなって使えなくなる前に直しておく。いわば予防保全(メンテナンス)としても、お役に立てればと存じます。
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ご愛用いただいているお品物を、少しでも長く、いい状態でお持ちいただけたら幸いです。お問い合わせお待ちしております。