シュランケンカーフのバッグはとても丈夫です。

ピッチーノでは、シュランケンカーフというドイツ生まれの革をよく使っています。
この革は、カーフ(仔牛の皮。生地のきめが細かく、柔らかく弾力がある)をクロームという鉱物由来の材料でなめし、シュリンク(収縮)させる薬品に漬け込み、生地の目をぎゅっと縮めてつくります。
それによって、表面のシボ感が強調され、厚みのある丈夫な革素材に仕上がります。
その革が、どれだけ丈夫なのか、どのように変化していくのか。
ピッチーノのバッグの仕立てはどのようなものなのかを、実際にご覧いただきましょう。

例として取り上げるのは、2014年にセミオーダーでお作りしたトートバッグです。
今回、お客様にご快諾いただき、取り上げさせていただきました。

参考:https://blog.piccino.jp/blog/2014/04/11/post-1710/

すべてシュランケンカーフ製で、本体をパープル、ハンドルをダークブラウンの革で、コンビネーションでお作りしました。マチのしっかりした箱のようなかたちで、ハンドルもしっかり自立しています。
このバッグが、2016年、2年後にご来訪いただいた時には、このようになっていました。

参考:https://blog.piccino.jp/blog/2016/02/18/post-789/

お客様によれば、毎日、お仕事でお使いいただき、パソコンやタブレットや資料など、およそ5kgほどもある荷物を持ち運ばれているとのこと。とても便利で重宝しているとのお言葉をいただきました。有り難いことです。

まずは形です。
ご使用前は箱のように直線的だったものが、お使いいただくうちにくしゃっとなりました。
シュランケンカーフはとても柔らかく弾力のある素材なので、いつまでも直立不動ではなく、入れる荷物や持ち方などによって、使いやすいようにだんだん癖がつき、かたちを変えていきます。その皺によって光沢が複雑につき、より表情豊かになっています。

次に表面。
シュリンク加工によって生地の目が詰まり、しなやかで強靱になっているため、弾力(復元力)があります。その為、折れ癖がついたところから弱り、銀面が剥げたり擦れていくといった様子が見受けられません。
上部がわずかに、底周辺はもう少し多く、銀面(表面)が剥けてしまっていますが、これは満員電車で足下に置いて蹴られるうちに、いつのまにかついたとのこと。。。全体として目立つ傷はありませんでした。
手触りは、おろしたての頃と比べて、縦横に引っ張られて揉まれているので、シボ感がやや落ち着いてきています。

そして色。
見比べていただくと、日焼けや褪色による色変化もほとんどありません。シュランケンカーフはドイツの伝統技術によるクロームなめしの革なので、その発色の鮮やかさはもちろん、色の定着もしっかりしています。
二年のうちには、急な雨に打たれたりしたこともおありだったそうですが、水染みなどもありませんでした。防水加工まではいかないものの、水気にも強い革です。
逆に言えば、革が好きな方がお好きないわゆるエイジング、茶色が飴色になるなどの変化はあまりみられません。買われた時の印象のまま、長くお使いいただけます。

なにより注目していただきたいのが、ハンドルの仕立てです。
荷物を目一杯入れてバッグを使っていると、その負荷はハンドルの付け根に一身に掛かります。その為、一般的なバッグでは、ハンドルが外れてしまったり、金具で接続していると金具が壊れたりということが多くあります。

ところがピッチーノの仕立てでは、ハンドルはびくともしていません。
これはハンドルを縫い付ける際に、しっかりと補強を入れているためです。お客様に長くお使いいただけるように、見えないところも決して疎かにはしていません。
(もちろん、糸が擦れて弱くなってほつれてしまったり、年数によって革の性が抜けるなど、素材として物理的な寿命を迎えることはございますので、その場合は修理のご相談をいただければと存じます)

このようにピッチーノでは、高品質な素材を用いて、しっかりした技術で、お客様に長くご愛用いただける製品を送り出しています。