新年明けましておめでとうございます。
2023年もpiccinoを、何卒よろしくお願い申し上げます。
新年ひとつめのブログは、お正月に見かけたお守りの話から。
piccinoのスタッフには千葉県民が多いので、お正月の初詣といったら成田山(新勝寺)が定番です。自宅のお札から、営業車の「交通安全」のお守りまで、御利益に与っています。
お守りの歴史は古く、たとえば縄文時代の人々は、勾玉(まがたま)を、魔除けの力があるとして身につけていたとか。今で言うパワーストーンです。洋の東西を問わず、石の持つ「きれい」という表情にはそれ自体に魔力がある、神霊の依り代となると、信じられています。
今につながるお守りの起源は6世紀。仏教が伝来し、盛んに寺社仏閣が建てられた頃です。当時の貴族を中心とした信仰する人々に、社名・神仏の名前、そして祈祷文を書いた呪符(護符)を授けたのが始まりとされています。当時は紙はまだ貴重品ですから、木簡つまり木札に書かれたそうで、そのスタイルが現代の日本にも引き継がれています。
一般的に「おまもり」というと、その木札を守り袋に入れたものを思い浮かべる人が大半かと思います。香具師の兄さんが日本各地を旅して恋をする映画でも、彼が産湯を使った帝釈天のお守りが、首から提げられて腹巻きの上に揺れていましたね。
ファッションやライフスタイルが目まぐるしく変わる現代。そんなお守りもまたさまざまに姿を変えています。そのひとつを、このお正月に見つけました。
なんと、カード型です。
元々、現世利益の多くは「金運」なので、お財布に入れられるお守り、というのは多くあります。蓄財の縁起物である打ち出の小槌や布袋様を象った細工物(根付けの飾り、今で言うストラップのチャーム)など。それらは、いわゆるがま口財布やの時代、多くの硬貨と一緒に入れておいたり、金具の端に付けておけるようになったものでしょう。
しかし、財布のコンパクト化、スリム化が求められるこの現代。決済アプリが浸透し、小銭は使わないのでもはや小銭入れはいらない! となると当然、そういうお守りも、お財布の中にとはいかなくなります。そこで生まれたのがカード型でしょう。小銭入れがなくなっても、カード段がないお財布というのは今のところありませんから、お財布の中で定位置を占められるわけです。いわば、お守りの生存戦略です。
(逆に言えば、どれだけコンパクトな財布、スリムな財布を使っても、お守りは入れておきたい、という、人の信心の現れでもあるかと思います)
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さて、新年一発目の新製品は、そんなスリムなお財布の究極形です。
ドイツの老舗タンナーのワープロラックスカーフスキンによる吹下冠薄造束入(ふきおろしかぶせのうすづくりたばいれ)です。
冠(かぶせ)を輪(わ。一枚を曲げる)ではなく、縫い付けにすることで、天に余分な空間を作らずに、上から下までスリムな形状を実現しています。
こんなに薄くても、カードポケットは6枚分。
運転免許証、保険証、マイナンバーカード、クレジットカード、キャッシュカード、そしてカード型お守りまでしっかり収納できます!
また、お札も30枚程度は無理なく収納できます。
(なんでしたら50枚くらいは入ります。厚みが出るのでちょっと冠が浮きますケド…)
吹下冠(ふきおろしかぶせ)とは、山風が山頂から麓まで吹き下ろすように、表裏で上から下まですっと本体が続いているかたちのことをいいます。半世紀ほど前まではわずかにあったかたちですが、今では造っているメーカーはほぼありません。
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実はこのかたちは、長年のpiccinoのお客様には、とても懐かしく、また待望のかたちかと思います。
以前、このかたちを担当していた職人が、数年前に高齢で仕事をやめてから、誰にも再現することができず、幻のアイテムとなってしまっていたものです。(シンプルなものほど難しい、を地で行くつくりです)
同じ製品への買い替えのご要望も多くいただいており、また、スリム財布が求められる市場の流れからも、なんとか復活させたいと、シュランケンカーフの薄造りシリーズを担当している職人と、数年越しに試行錯誤を重ねて、ようやく同様の製品が実現しました。
以前の製品をお持ちの方、このくらい薄い財布が欲しかったという方、ぜひご注目ください!