個性の強い色を使いこなす(スタッフRのセミオーダーバッグ第三弾)

こんにちは。スタッフのRです。

ようやくコロナ禍も落ち着いてきて、外に出かけたり、人と会う機会も増えてきましたね。弊社にも少しずつバッグのご注文が増えてきて、人も物も動き始めている空気が流れてきました。まもなく梅雨が明ければ、待望の旅行シーズン! 気をつけながらも、一期一会の楽しい時間を過ごしましょう!

わたしも景気づけに、自分用のバッグをまたひとつ、仕立ててみることにしました!

※過去に作ったバッグはこちら。どちらもまだまだ元気です。

物持ちスタッフRがバッグをセミオーダーしてみた。

一枚の革で作り揃えるという“遊び”

今回のバッグのコンセプトは

軽く持てると評判のビジネスリュック

このビジネスリュックは、この一年、多くの方が、軽さと使い易さにとても感激してくださり、お買い求めいただいた後にも、わざわざ感想や写真を送ってくださることも幾度となくありました。わたし自身はデイリーボストンやショルダーなどの肩掛け派なのですが、そんなにいいならと試してみたくなりました。なんせ荷物は多いもので…。

新色のダークグリーン!バイカラーにチャレンジ!

昨年からラインナップに加わった、シュランケンカーフ第20番目の色、ダークグリーン。今年の流行色でもあります。

お財布では少しずつ注文をいただくようになりましたが、まだまだバッグでの作例が少ないので、自分で注文してみることにしました。

また、昨年、バイカラー好きのお客様から始まって、お仕立て物のご注文をいただく際に、ワンポイントでもバイカラーにしてオリジナリティを出したいというご要望がとても増えました。なので自分でもやってみたくなったのです(*´∀`*)

一枚の革から

せっかくなので、また一枚の革からいくつかを作り揃えることに。

新たな仕掛けも

これは後述します。

個性の強い色同士を、組み合わせて活かす

そうして工房に発注したのがこちらです。

H307WP ダークグリーン×ウメ(リュック)
A-2010H ダークグリーン×ウメ(クラッチバッグ)
WP-10H ダークグリーン×ウメ(サコッシュ)

シュランケンカーフは広い面積を使って、光をいっぱいに受けた時の光沢がとても美しい革なので、大ぶりのバッグを仕立てると、とても映えるのです。また、明るい色味のステッチによる縁取りの視覚効果も相まって、より明るく見えて、まさしくダーク“グリーン”だなと見えるようになりました。

(色見本帳を見ていると、黒に近く見えたり、写真で撮ってみると明るすぎてブルーグレーに見えてしまったりしますが、ちゃんとグリーンです!)

新色のダークグリーンで作ることにして、さてゾッキ(一色)にするか、コンビネーションカラー(二色以上)にするかを最初に考えました。ゾッキも格好いいと思うのですが、やはり“ダーク”グリーン(ふかみどり)。暗めの色なので、ちょっと印象が重くなってしまうかなと。

もちろん、お客様にお求めいただく際には、ビジネスの場で、目立たず控えめに、しかし重厚な印象を主張する、良い色として選んでいただけるだろうと捉えております。

ですが今回は、piccinoの”中の人”が使うものですから、目立ってくれなきゃ困るんです。(笑´∀`) なにそれすごいね、って興味を持っていただくこと。そこからがお仕事ですから。

昨年から、バイカラー(二色)の魅力と可能性をお客様に教えていただいているので、組み合わせによって、色を引き立たせることを考えてみました。

緑深い茨のてっぺんに咲く一輪の花

ダークグリーンと合わせる色として、まず候補に上がったのは、同じく黒に近いネイビー。暗めの色同士で、よくよく見られて気づかれたら誇らしいというチラリズム様式(?)です。格好いいとは思うのですが…目立ちません。

次に、ライトグリーン。明暗は正反対ですが同じグリーンなので、まとまりのいい上品な仕上がりになると思いました。ただ、まとまりよすぎても目立ちませんので…(^◇^; もっと対照的な、象徴的な、ドラスティックな組みあわせをと考え始めました。

コントラストを効かせるならイエロー。グリーンとイエローの相性は鉄板です。但し、引手の部分を替えるのだとしたら、手の脂や汗でくすみやすい色は避けたほうがいいかなとも。同じ理由でホワイトやサクラも考えから外されました。

とっかえひっかえ色を合わせていきましたが、非常に困ったことに、どれも合うんです。異素材や別の革と合わせているわけではなくて、同じシュランケンカーフで合わせているのですから当たり前です。全20色、明暗精彩さまざまでも、どの色も上品な光沢と色気があるのは同じなので、どう組みあわせてもまとまりはいいのです。なのでお客様には、どんな組み合わせでも、お好きなお色でとお薦めはできるのですが、今回は理由が理由なので、悩ましいことになりました。

発想を転換して、なにかモチーフを持たせようということに。ダークグリーン…、深緑…、緑と言えばやはりみどり(植物)。それも新緑ではなくて、鬱蒼と茂る深い森の色です。そこから、グリム童話の『眠れる森の美女』を連想し、折り重なる茨の上に、一輪の花があるイメージが浮かんできました。

このデザインでバイカラーにする場合の定番部位は、アーチを描くハンドル天ファスナーの笹の葉型の引手。それらが、ちょうど花と花びらのモチーフのようにも見えるので、その方向で決まりました。

しかし、真紅の薔薇をイメージしてライトレッドを合わせたら、主張が強すぎてそこだけに目がいってしまいました。スミレにすると、今度は淡すぎて印象が弱くなりました。日本で花と言えば桜ですが、サクラ(ピンク)だと甘すぎて、メンズとはいいづらくなってしまいました。

試行錯誤の上、最終的に「ウメ」と合わせることにしました。とても綺麗な色ですが、鮮やかで主張の強い色でもあります。レディス向きのお色ですが、ゾッキでバッグを作ると、綺麗すぎて持ちこなせないと、選ばれづらいお色です。なので今のところは、お財布などの小物で人気があるのですが、こうしてワンポイントカラーとして取り入れることで、バッグのなかでも活かせる可能性がみえてきました。

ダークグリーンとウメ、どちらも個性の強い色ですが、個性の強いもの同士を掛け合わせることで、素晴らしい結果が生まれるという好例となりました。

バイカラーを支える二つの要素

オペラピンクのステッチ

ステッチ(糸の色)は、オペラピンク。ウメの革よりももう一段階明るく強いピンクで、光沢のあるお色です。ダークグリーンの暗めの革を、輝くような明るい糸が縁取ることで、ドラスティックに全体を引き締め、バイカラーとなったウメとの仲立ちを果たしています。

コイルのファスナー

また、ファスナーをニッケル(金属)からコイル(化学製品)に変更しています。

piccinoの標準仕様では、シュランケンカーフのバッグではニッケルのファスナーを使っています。金属のほうが頑丈で耐久性が高く、また重みがあるので勢いをつけて引きやすくなります。またメインのファスナーで金属の輝きが入ることで、文字通り一本筋が入ったように、バッグの印象が締まるのです。

対して、コイルのファスナーの利点はまず、務歯(ムシ)までファスナーテープと同色にできること。今回のように、「緑と花」というイメージからコンセプチュアルにカラーを決める場合、金属の輝きが入ると印象がぶれるように感じるので、コイルファスナーで同色で統一しました。

そして、コイルは軽いので、すこしの力で開けられますし、勢いよく開けても、金属が擦れる耳障りな音が立たないので、静かに使えます。わたしは演劇や落語の鑑賞、美術館や本屋通いが趣味なので、静寂な空間の邪魔にならないように静かにバッグの開け閉めをするには、コイルのほうが安心なんです。

なにより、コイルは化学製品で、つまりプラスティックと同じなので、手を突っ込んだときに務歯(ムシ)に手が当たっても、金属のように痛くありません。

ただし、プラスティックと同じということは、開け閉めする時の摩耗による耐久性は金属よりも低いということです。そのため、務歯が欠けてしまったりする可能性は、ニッケル(金属)よりも高いのです。そのため、シュランケンカーフなどの高級皮革で、十年以上長持ちするであろう製品には、ニッケルのファスナーを使うことが多いのです。

ただ、わたしの場合は、ファスナー壊れたらすぐに取り替えてもらえますので…、別にコイルでもいいかなって(笑´∀`)

もちろん、お客様にお求めいただきましたものも、ファスナーが引きづらくなったり、テープが破れたりしたら、お修理は可能です。革素材がまだまだ元気ならば、お取り替えすることができますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

一枚の革から

今回も一枚の革から、いくつかのアイテムを揃いでつくってもらいました。

角2封筒がそのまま入るクラッチバッグ

もちろん揃いのバイカラー。ダークグリーンのみどりのなかにウメの丸タックで、二輪の花が咲いているかのような景色です。

角2の封筒がそのまま入るというA4サイズのクラッチバッグは、営業でお取引先を回る時にとても重宝します。また、B5サイズは、昨年、ワープロラックスカーフのショルダーバッグと同時に仕立てたものをタブレットケースとして使っていますので、サイズ違いでこの機会に持つことにしました。

夏場に持ちたい拡張ポケット・サコッシュ

身体が硬いので、スマホやパスケースを出すだけで、わざわざ身を捩ってリュックを下ろすのが面倒だという思いで、ショルダーバッグ派だったのですが、サコッシュやポーチとの併用でお使いいただく作例が増えてきたので、それなら自分でも使えるだろうなと思いました。
(ショルダー付ポーチだと、さすがに女性っぽくなってしまうので、男性でも使えるサコッシュに)

ちょうどそろそろ梅雨も明けて暑くなる頃。毎年威力が増していくような酷暑で、サマージャケットすら着られない季節です。ジャケットがないと、ちょっと財布やスマホを持って買い物に行くにも不便なので、サコッシュがあると便利です。

このようにリュックの背面のマグホック付スリットポケットにぴったり納まるので、リュックを下ろし、併用してるサコッシュも外した後は、こうしてすっきり収納できます。

底板をバージョンアップ

新色ダークグリーン、バイカラー、一枚の革から揃いで、とご紹介いたしましたが、これらはすでに作例紹介記事で取り上げた要素ですので、これだけだと新鮮味がありません。せっかくなのでもう一工夫してみました。

底板を革巻きに

piccinoではふだん、底板は、カットしたベルポーレンをそのまま入れるか、内袋と同じキャンパス生地でベルポーレンを包んで縫ったものを入れています。それを、革で包んで縫ってもらいました。

こうしたほうがやはり格好良いし、統一感も高級感も出ます。布地よりも繊維が厚いので耐久性も高くなります。

ですが、革を使うと、もちろんお値段が嵩みます(シュランケンカーフでこの面積だと、だいたい定価で一万円程度のプラスです)
バッグの底、奥深くに敷いてしまうもので、汚れても見えない。そこまで拘らなくてもいいというお客様のほうが、正直な話、多いかと思いますので、これまで取り組んでは来なかった部分です。

そして、せっかくならもう一工夫できないかと思い、こんな風に遊んでみました。

隠しポケット

本体と同じくバイカラーにして、裏面はもちろんウメに。そして、大事な物を、一番奥底にしまっておけるポケットを付けました。

以前、おなじ307型リュックをお仕立てさせていただいたお客様が、海外に持っていくのに、簡単に開けられない仕掛けを、と仰っていたのを思い出し、パスポートが入らないかと試してみたところ、ぴったり入りました。

このリュックは本体のマチ幅が約12センチなので、底板は約10センチになります。これ以上のマチ幅のバッグの場合は、いろいろ活用できそうです。

女性にやさしいビジネスリュック第二弾。一回り大きな選択肢も!

実はわたし、子どもの頃から推理小説や冒険小説が大好きで、モーリス・ルブランの『怪盗紳士ルパン』や、コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』がとても好きでした。この仕掛けを思いついたとき、真っ先に思い出したのが、それらの物語の中で、バッグの底が二重底になっていて、隠し財産の在処を示す暗号と地図が…というやつです(*´∀`*) 残念ながら暗号にするほど財産はありませんが、通帳や、あるいは虎の子として紙幣を何枚か入れた封筒を入れておくことはできそうです。

また、盗難対策として、AirTagなどを仕込んでおくのも有効かもしれません。

お仕立ての際の追加オプションとして。既存のバッグにも。

底板の革包みは、今後、お仕立てのご注文の際に、ファスナーやステッチの色変更などとともに、追加オプションとしてご案内することになりました。

また、今現在、お使いになっているバッグにも、追加オプションとしてお作りすることができます。piccinoには過去すべての製品の型紙が保管されておりますので、ご注文の際に品番をお伝えいただければ、そのサイズでお作りすることができます

※現在お取り扱いのある革素材でのみ可能です

底板だけきれいになっても、裏地(内袋)が長年使っていて汚れてるから、ということも多いかと思います。piccinoでは、内袋の取り替え修理も承っております。内袋を造り直し、縫い解いて取り付け直します

※バッグの革が、縫い直しに耐えられる強度を保った経年の状態でのみ可能です

それと併せて、底板のバージョンアップをされると、ご愛用いただいたバッグが、また新たな輝きを宿して、長くお使いいただけるものになるかと思います。

詳しくはお問い合わせ下さい。

※バッグのサイズ、素材、現在の状態、職人の作業工数などを勘案して、お見積もりいたします

こんな風に使います

待望の動き回れる夏、このリュックで元気に頑張ります!

レディスのスーツに合わせられるとお褒めいただくことが多いリュックですが、メンズにもしっかりお使いいただけます。

ジャケットの上から掛けたところ。ぺたんこなので、ジャケットやコートの下に仕込むこともできます。

本稿をご覧いただいて、ご興味を持っていただいた方は、弊社ショールームにお越し下さいませ。今度からは、背負って実際に使ってみた実感も、お話しできますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

※ショールームは予約制です。(03-3638-2631)