暦は立春から雨水へと移り、すこし暖かくなってきましたね。piccinoの事務所の近くにある亀戸天神の梅も満開を迎え、春の足音が少しずつ聞こえてきています。
コロナ禍第6波はようやく鎮まりそうな気配を見せていますが、元々この時期はインフルエンザも流行する頃です。どうぞ皆さんお気を付け下さい。
今年初めての作例紹介は、お馴染みのあの方!
本ブログでも何度か取り上げさせていただいた、コンビネーションカラー(バイカラー)好きのお客様から、新たなご注文をいただきました。
昨年、いくつもののご注文をいただき、私どももたいへん勉強させていただきました弁護士のN様から、新しいリクエストをいただきました。
今回のご注文は「カメラが入るバッグ」です。
先だってご紹介した弊社スタッフのバッグをご覧になったN様。ちょうどカメラを始められたとのことで、カメラをすぐに取り出せるバッグが欲しくなったとのことでした。
今回のご要件はこの5つ。
「マイクロフォーサーズのコンパクトなミラーレス一眼と交換レンズをさっと出せるように、大きめの外ポケットをふたつ」
「ハンチングのイメージのかぶせ(冠)か、せめてフラップのデザインが欲しい」
「カジュアルに使うのがメインなのでショルダー付き」
「出張の合間にカメラを使いたい時もあるので、ビジネスでも持てるハンドル付き」
「当然、バイカラーで。仕事でも使えるトーンで。新色のダークグリーンを入れたい」
お話していて、どうやら頭に描いているかたちがおありのご様子。伺ってみると、以前お使いだったバッグが、ちょうどそういうつくりのバッグだったとのことでした。せっかくなので、その古いバッグをお預かりして、参考にさせていただきました。
と言っても、そのままそのバッグのコピーを作るということではありません。そんなことはやりませんしできません。各メーカーごとに、職人が持つ技術というものは異なり、なんでも縫えるし作れるというものではないのです。piccinoのものはpiccinoの職人にしか作れないと自負しておりますし、反対に、他社さんの製品をうちで作ることはできません。
またそもそも、今回の要件の第一が、今お持ちのカメラが入ること、であり、それにはお借りしたバッグでは小さかったのです(だから新調なさることになったというわけで)。なので、あくまでも「こういうかんじ」というのを参考に、piccinoらしい造り方で、新たに型紙を切って、お作りした次第です。
今作はグレー×ダークグリーン
素材はシュランケンカーフ。お色はグレーをベースに、アクセントとしてハンドル、外ポケットのフラップに、新色のダークグリーンを挿したバイカラー。
この新色が入荷した際に、カラーサンプルをご覧いただいていたのですが、その時からずっと、こう使ったらきれいなのではないか。というイメージを考えてくださっていたそうです。
昨年秋から投入された新色のダークグリーンは、P888HやP111H、A-69HやA70Hなどの小物のカラーバリエーションには追加しましたが、バッグを作った例はまだあまりありません。こういった暗めの色の場合、レギュラー品としてゾッキ(単色)でバッグをお作りしようとすると、どうしても印象が重くなってしまうので、メンズのビジネスで「黒」の変化球としてご提案するのが良いかなと思っておりました。
ですが、こうしてアクセントとして使われると、黒に近いと言われるネイビーもダークグリーンもまた違った顔を見せてくれます。デザインによっては、レディスの落ち着いたトーンのラインでも、充分通用するでしょう。コンビネーションカラーの妙を、またひとつ勉強させていただきました。
また、大きなバッグで見てみると、小物よりも光を受ける面積が広く、光沢によってグリーンの発色が鮮やかになります。写真ではわかりづらいですが、肉眼でご覧になると、間違いなくきれいな「こいみどり」に見えると思います。
大きな外ポケット。マグホックによるフラップ付き
前胴の外ポケットは中央で割って左右に配置。片方にミラーレス一眼カメラ、片方に交換レンズが収納できるつくりです。中央側には片マチが付いており、また柔らかいシュランケンカーフが内側に向かってへこんでくれるので、大きく空間を確保できます。口径の大きめなレンズもそのままストン。カメラは、パンケーキレンズから中距離標準レンズまでは、付けたままでもしまえました。
マグホック付きのフラップ仕様なので、ファスナー式よりも素早く取り出して、シャッターチャンスに対応できます。
このバッグは前胴が張り出しているので、持つ方向が限定されます。持ったときに身体に当たる面である後胴には、広めのファスナーポケットを設けています。ここにスマートフォンや薄い束入れを挿しておけば、歩いているときでもすぐに取り出せます。
また、出先でいただいた封筒なども、一時的にここに挿してしまえば、両手を開けることが出来ます。
ショルダーベルトを伸ばすとこのくらい。ただしビジネスでスーツをお召しになった際には、ベルトはお使いにならないとのことなので、取り外し可能なつくりにしています。
自分に合うポケット
内部の仕様は、前回お納めしたボストンバッグとまったく同じにつくりにしました。
「このボストンバッグのポケットが、とても使いやすいです。たまに、以前から持ってた(他社製の)バッグも使ってみようと引っ張り出してみるんですが、ポケットの位置や形が違うから、使いづらく感じるようになってしまって」
そう仰っていただき、バッグ屋としては、してやったりと心の中でほくそ笑んでしまいました( ̄∇ ̄)
もとい、これがお仕立てものの醍醐味のひとつです。どれだけバッグを持ち替えても、入れておきたいものが、入るべきところに入る。「いつもの」バッグじゃなくても、「いつものように」使えるように、「どのバッグでも」同じような仕様にできる。お仕立て物を二本三本と作っていただいたからこその感慨でいらっしゃいます。
その方のお仕事や生活に必要なものを伺って、それを収納できるようにポケットを作るわけですから、既成品をそのままお使いになるのとは訳が違います。どんな些細なものであっても、それが重要なものであれば、ちゃんと入れる位置を決めておけるのは、使い心地として大事な要素のひとつだと、私たちは考えています。
今回もベストドレッサー賞
相変わらずお洒落な方で、お納めの日にはちゃんとバッグの配色に合わせて、グレーのスーツにグリーンのネクタイをしてきてくださいました。
また、別日にお越しになった際、お持ちいただいた時の一枚も。
こちらはとてもカジュアルですが、やはりグレーのアウターにグリーンのインナー。もうベストドレッサー賞を差し上げたいくらいです。
オンオフ両方でお使いいただいているとのことですが、どちらのお召し物にも、バッグがとてもしっくりきてらっしゃいました。
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新色のダークグリーンを使っての、早速のご注文で、とても有り難く、よい勉強をさせていただきました。ありがとうございました。
(30代男性、弁護士)