2トーンで実現した、2シーンに使えるボストンバッグ(バイカラー作例)

バイカラー特集、第二弾。

先月ご紹介したバイカラー好きのお客様から、もうひとつ、ご注文をいただきました。

テーマカラーにカスタマイズオーダー

今回のアイテムは、二泊出張にも行けるくらいのボストンバッグ。
もちろんバイカラー(2トーン、コンビネーションカラー)でのご注文です。

ベースとなるかたちは、以前、筆者が自分用にカスタマイズオーダーしたバッグ。WW-25R。

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書類やPCが入って衣類も入る容量、13インチのPCも楽々入る口元の開き具合や、豊富なポケットの実際の活用例などもご覧いただき、こちらをベースにして、革素材を変更し、カスタマイズオーダーでお造りすることになりました。

今回のリクエストは、

「二泊出張に使える実用的なデイリーボストン」でありつつも、
「お客様先にそのまま伺えるフォーマルなもの」
「気品ある色味のシュランケンカーフをバイカラーにして、高級感のある、他に誰も持ってないようなバッグにしたい」
そしてできれば、
「カジュアルに家族旅行にも使えるといい」
ということで、一見、矛盾するような要件が四つ挙げられました。

前回のビジネスバッグが格好良く仕上がり、とてもご満足いただけましたので、それを受けて、「実はこういうのがあるといいなとずっと思っていた。こちらならそれが叶うのではないか」という、さらなるご期待を寄せていただいた次第です。
ならばお造りいたしましょう、ということで、仕様を詰めていきました。

そうしてできあがったのがこちら。
シュランケンカーフのスカイブルー、やわらかい印象の淡い空色をベースにして、ハンドルと前胴表ポケットに、新緑の生命力溢れるライトグリーンをあしらいました。

piccinoは、レディスのフォーマルのバッグを始祖に持つ技術のメーカーなので、こういった大ぶりのバッグでも、とても「きれいな」ものができあがります。


(参考。同デザインを光沢のある黒の革で。ビジネス感が強い仕上がり)

裏を返せば、piccinoの仕立てで、シュランケンカーフなどの高級素材を用いれば、メンズの定番色であるブラックやネイビーやダークブラウンを外しても、ビジネスにも使える品の良いフォーマルさが保てるはず。その上で、色で遊べば、フォーマルすぎず、プライベートにも使えるいいとこどりのバッグができるのではないか、という試みです。
(筆者が自分用に、ワープロラックスカーフのインクブルーで作った時にも、それは意識しましたが、それでもメンズカラーでした。今回はさらなる冒険です)

バイカラーの配色は、これが正解というものがないので、いつもお客様と一緒に頭を悩ませます。
異素材を組みあわせる場合、素材の特性と部材によって制限がかかりますが、今回のように同じ革で色だけを違える場合、いかようにも作れるからです。前胴にアクセントを効かせたら、後胴はどうするのか。ハンドルを違えるなら、ショルダーベルトはどうするか。ベルトの付け根はどうするのか。ファスナーの引手はどっちにするか。やろうと思えばいくらでもできますが、やりすぎてもごてごてとしたものになってしまいます。

今回は、手に握られて持ち主とつながるハンドル、そして前面の広い面積の色を大胆に違えることで、高級感と余裕のある雰囲気を醸し出せました。

ショルダーベルトは、一般的なショルダーバッグと同じ長さで。
手持ち、肩掛け、そしてたすき掛けと、お使いになるシーンとお荷物によって、さまざまに持ち変えることができます。

前胴表ポケットは、スマートフォン、飛行機や新幹線のチケットなどがすぐに取り出せるように胴いっぱいの高さで。その内側には、既存の仕様通り、浅めのスリットポケット×2を設けて、パスケースや名刺入れなどが奥に沈まず、さっと取り出せるようにしました。

メインポケット内側の平ポケットは、既存の仕様ではどちらも1:2:1で仕切りを入れてあるのですが、今回は前胴側を1:2:1、後胴側を3:1の配分で区切りました。

それによって、前胴側にはiPad Proを縦に(Apple pencilを付けたまま)挿せるように。

後胴側にはMac Book Airを横に収納できるようになりました。

平ポケットは、まったく仕切りを入れないと、特にこういった広いバッグでは、布自身の重みで、テンションが保てずにダレてきてしまいます。なので、仕切りを設けて、二分割ないしは三分割にして、ポケットとしても使い易いようにします。

今回のように、お客様がいつもお持ちのアイテムがおありの場合は、それらを収納することを踏まえて、仕切りの位置(ポケットの広さ)を検討します。カスタマイズオーダーの大きなメリットです。

また、後述する持ち方の向きを考慮して、手元側(お腹側)にくるように「3:1」の1、「1:2:1」の1を仕切ってあります。ここにお財布やキーケースなどの、すぐに取り出したい小物を挿しておけば、ちょっと天ファスナーを開けるだけで、さっと取り出すことが出来ます。

こちらがお納めの際のお写真。
当日は、水色のアウターとグリーンのインナーでお越しいただきまして、今回も隙がないトータルコーディネートを見せていただきました。

今回のお客様は、筆者と同じく、常に右肩から提げて右側でお持ちになるとのことでしたので、天ファスナーと前胴表ポケットの引手は、既成の仕様通り、ダブルの頭合わせにしてあります。実はこれも、カスタマイズオーダーの大きなメリットのひとつです。

一般的に、バッグのファスナーは、正面から見て、左から右に向かって開ける方向にファスナーを据え付けます。右利きの人が多いからです。

(※参考。これは裏胴だが、左から右に開けている。表胴は逆向きになる)

前胴も後胴も同じデザインのバッグならば、どのようにもお持ちいただけますが、今回のバッグのように、表胴と裏胴がはっきり分かれているデザインのバッグを右側で持とうとすると裏胴はともかく、表胴や天のファスナーの引手が背中側に回ってしまうのです。
(※上掲の裏胴側から見れば、左側がお腹側、右側が背中にくる)

ポシェットサイズなら気になりませんが、このように大ぶりのバッグでは非常に使いづらく、また死角になる背中側から、不意に開けられてしまう不安がついて回ります。
そのため、ファスナー引手をダブルにして、どの位置からでも開けられるようにしております。上の写真のように一番右に引手を寄せておけば、右側で持っても、手元で開けやすくできるのです。

多くの方は「バッグに合わせて持ち方(右肩で右提げ、左肩でたすき掛けなど)を変えるし、多少違和感があっても慣れてしまう」と仰るのですが、持ち方がひとつのスタイルに固定されている方は、いかによさそうなバッグでも、これは持てない、とお買い物の際に却下されているかと思います。いわんや左利きの方をやです。

カスタマイズオーダーでは、バイカラーのような特段の趣向だけでなく、このような細かい、しかし決定的な仕様についても、お使い易いようにお造りすることができます。

たすき掛けにして背中で持たれた一枚。

明るい配色が効果を発揮し、カジュアルな服装でも違和感なくお持ちになれています。
また、ベースが水色、つまり寒色・収縮色なためか、サイズ感のわりに、あまり大ぶりに見えません。迫力も高級感も気品もある。けれども存在感は、あるともいえるし、控えることもできている、といった不思議な魅力が備わったバッグとなりました。

piccinoでは、バイカラーの製品はラインナップしておらず、お客様からのご依頼をいただいて、カスタマイズオーダーにてお造りしております。また、正味の話、その例は決して多くはありません。ですので、製造の際、検品の際、お納めの際には、スタッフ一同、いつも緊張しております。きれいに仕上がったとは思うけれども、お気に召していただけるかなと。

有り難いことに今回も、大変お気に召していただけました。
お納めの際、細部の仕様や持ち心地の確認などをしていただく間も、まじまじと眺められ、いや、見惚れられ、触り心地を確かめられ、感動されているのが伝わって参りました。そのご様子を伺って、筆者も胸が熱くなりました。

今回も大変いい勉強をさせていただきました。ありがとうございました。

(男性、30代、弁護士)

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